- #現場規模~500人
- #業務改善、安全意識向上
技能者のモチベーション高めつつ、現場業務を改善
魅力ある建設業の打ち手の一つとして効果を期待
鹿島建設株式会社
- 事業内容
- 土木事業・建築事業・開発事業等
- 資本金
- 814億円余
- 現場規模
- 技能者100~500人
- 導入前の目的
- 業務改善、安全意識向上
- 導入後の効果
- ペーパレスKYやBuildeeの作業予定入力率の向上、技能者のモチベーション向上
鹿島建設様の手がけるベルーナ札幌ホテル新築工事現場(以下、「ベルーナ現場」といいます)では、現場の諸業務の効率化に向けて、Buildeeの定着・浸透をはじめ、ペーパレスKYなど、積極的に業務効率化に取り組みました。それらの取り組みを行う現場の技能者に対して、ビルダーズポイントを通じたポイント付与を実施しました。2024年6月末にビルダーズポイントを導入し、Buildeeへの入力率の向上やKYの提出状況の改善などの結果が出ました。
時代の変化に伴い、建設業の深刻な人手不足への対応に迫られる
2024年4月以降、建設業界では働き方改革関連法(改正労働基準法)、とりわけ時間外労働の上限規制による影響によってICT化を含む建設現場の諸作業の効率化が急務として求められています。過去を遡ると建設業界は花形とされ指折りの人気業種の一つとして数えられていましたが、現在においては、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)として建設業が認知されていることを背景に慢性的な人手不足に陥っています。スーパーゼネコンの一角である鹿島建設の手がける建設現場も例に漏れません。ベルーナ現場の工事事務所長を務める有江氏は、建設業界の現状について次のように説明しています。
「現場作業というものは、ケガの程度は異なれど常に危険を伴う厳しい仕事ですから、まずは安全の確保が第一、それから働きやすい環境の整備も大切です。建設業の魅力を高めて若者から不人気業種として建設業が敬遠されている現状を打破していきたいと考えています」
そのために、鹿島建設では多種多様な取り組みを行っています。その一つの施策として、ベルーナ現場においては安全意識の向上と現場環境の改善を目的にポイント付与サービスであるビルダーズポイントを導入し、技能者の処遇改善に取り組みました。
ペーパレスKYの提出状況やBuildeeの入力率に課題
サービス運用によって状況が好転
鹿島建設では、安全の新たな取り組みの一つとしてペーパレスKYを実施しています。ビルダーズポイント導入以前のペーパレスKYの提出状況について、毎日数社は必ず提出漏れがあったそうです。現場のITツールのサポート業務を担う横山氏は導入以前の状況を次のように述べます。
「毎日お昼ごろにKYの確認をするのですが、私が確認するまでに提出してくれている協力会社さんはおおざっぱに70%程度でした。提出してください、と依頼をしても2~3社は提出漏れがあったりしました」
当時のKYの提出状況に加え、Buildeeの作業予定などの入力率についても状況を改善する必要があったと、横山氏は導入以前の状況を振り返ります。
ビルダーズポイントを導入後すぐに状況が好転したわけではありません。当初はなかなかアプリのインストール・会員登録をしてくれない技能者もいたといいます。しかしながらビルダーズポイントの口コミが徐々に技能者の間で広まり、ビルダーズポイントを利用する技能者も増えたそうです。
「ビルダーズポイントを導入し、サービスの運用を開始したことを踏まえ、KYをしっかり提出して、Buildeeにも入力しないとポイントがもらえない仕組みに変えてみたところ、Buildeeの入力率は100%となったことに加え、KYの提出率も90%程度にまで引きあがりました」(横山氏)
ポイント付与が技能者のモチベーション向上につながる
技能者の処遇改善への寄与にも期待

ベルーナ現場でのビルダーズポイントの運用について有江氏は次のように説明します。
「当現場では顔認証による現場入場、ペーパレスKYの実施、Buildeeへの作業予定の入力のすべてを、所属する協力会社の技能者全員が実施した場合に、ポイント付与対象の技能者1人につき1日500ポイントを付与する運用をしていました。1ポイントあたり1円に換金することができるので、技能者は1日当たり500円分のポイントを電子マネーで得ることができます」
事実として、前述の通り、KYの提出率が向上し、Buildeeへの入力率も飛躍的に向上したことから、有江氏は続けて技能者のモチベーションについて述べます。
「私の肌感覚としても、現場の技能者の方々のモチベーションも向上したのではないかと想像します。技能者の方々にとってポイントの付与が楽しみの一つとして捉えてくれていればいいなと思います。そんな状態になっていれば、我々としてもビルダーズポイントを導入した甲斐があります」
ベルーナ現場では2024年6月末から竣工までのおよそ5か月間ビルダーズポイントを運用しましたが、一番多くポイントを獲得している人は最終的に38,500ポイント(38,500円分)を獲得したといいます。ポイントが付与された技能者は貯まったポイントで、昼食の食費にあてがう人もいれば洋服を買ったという人もおり、さらには休暇時にポイントを利用するなど、ポイントの使い方は千差万別といいます。
横山氏と技能者の方との日々のやり取りにおいては、ポイント付与がある現場の良さについて言及するシーンもあったといいます。
一過性の施策として運用するのではなく
ポイント付与方法に工夫を凝らして、より柔軟な運用を考えていきたい
ビルダーズポイントを運用し、業務改善だけでなく技能者のモチベーションも向上したことを受け、今後の活用や将来の展望について有江氏は次のように述べます。
「結果として新たに取り組みを始めたペーパレスKYの実施率を向上させることができました。当初の目的に対しては達成できたのではないかと考えています」
ビルダーズポイントを高く評価する一方で、中長期的な目線での懸念についても言及しました。
「中長期的な観点では、ポイントのありがたみがマンネリ化してしまうと得られる効果が薄れていくと思います。ポイント付与というものはあくまで一過性の対策でしかなくて、建設業界が抱える諸課題の本質的な対策ではありません」
今後のビルダーズポイントのあり方について、有江氏は提言します。
「ビルダーズポイントを適用する目的が業務改善の一辺倒では、続いていかないと思うんです。だから、その時々の課題や社会的な要求は何なのか、それによって柔軟に付与の仕方を工夫していく必要があるのではないかと思うのです。ポイントを運用する目的や課題を明確にしてポイントをうまく活用する知恵がこれから望まれるのではないかと考えます。あくまで一例ですが、職長会会長ポイントや優れた安全管理を表彰する安全MVPポイントなどでもよいと思います。様々な工夫をこらして、そこで得られる効果はどのようなものなのかを見極め、効果が出るポイントの付与方法を確立していけばよいのではないかと思います。こうした取り組みによって建設業の魅力を高め、この業界に入職する若者が増えてくれることを切に願います」