- #現場規模~200人
- #安全意識や業務への意欲向上
協力会社を介さず元請から直接ポイントを技能者へ
技能者の仕事をポイントで報い、モチベーションアップを実現
鹿島建設株式会社
- 事業内容
- 土木事業・建築事業・開発事業等
- 資本金
- 814億円余
- 現場規模
- 技能者200人程度
- 導入前の目的
- 安全意識や業務への意欲向上
- 導入後の効果
- 業務やヒヤリハット報告などのモチベーション向上、安全意識の向上
2024年6月より提供を開始した「ビルダーズポイント」。鹿島建設様の仙台中央三丁目開発事業新築工事(以下、「中央三丁目現場」といいます)にお伺いし、ビルダーズポイントについて、現場の古川所長に、どのように利用しているのか、実際にサービスを利用してみて感じていることなどをお伺いしました。中央三丁目現場において、ビルダーズポイントは様々なシーンで付与されていますが、安全大会の参加者全員にポイントを付与されているとお伺いし、本記事では安全大会に参加した技能者の声もお伝えいたします。
技能者の皆様へインタビュー
今までどれくらいのポイントを獲得されましたか?

技能者Aさん:3か月くらいで、6,700ポイント(6,700円分)です。
技能者Bさん:同じく3か月程度で、7,400ポイント(7,400円分)です。
付与されたポイントでどんなものを購入しましたか?
技能者Aさん:コンビニでお弁当、ジュースやたばこを買ったり、飲食店で利用したりしています。
技能者Bさん:私は小学生の娘がいて、「仕事でポイントを貰える」という話をしたら、娘が毎週楽しみにしています。貯まったポイントは休日に使っていて、獲得したポイントは娘のからあげくんに変わっています。
技能者Cさん:毎日娘と一緒に出勤するので、コンビニで娘のお菓子やジュースを買っています。
ご家族とのコミュニケーションにつながっているとのこと、素敵ですね!
どういったシーンでポイントを獲得されましたか?
技能者Bさん:ヒヤリハット報告や、社外から求められたアンケートへの協力などでポイントをいただきました。

技能者Cさん:獲得したポイントが一番多かったのは、所長からいただいた、建方*前日のサンキューポイントですかね。
*現場で建物の主要な構造材を組み立てること。土台の据付から柱、梁、棟上げまでの作業工程
古川所長:建方前日に、前段取りなどが終わっていなかったので、翌日からの鉄骨建方ができないのではないかという状態だったのですが、何人かの技能者の方に清掃などに協力いただき、無事に鉄骨建方を開始することができました。その時に感謝の気持ちを込めて、協力いただいた技能者の方にポイントを付与させていただきました。
ビルダーズポイントについて率直にどう思いますか?

技能者Dさん:とても素敵な仕組みだと思います。給料以外でこういったポイントを貰えるのは、やる気にもつながると思います。何より、所長から会社を通さずに直接ポイントという形で、感謝の気持ちを貰えるのは、感極まるものがあります。
技能者Eさん:モチベーションが上がりますね。ヒヤリハットの報告でポイントを付与いただけるので、より報告をしようという気持ちにもなりますし、沢山報告することで、より安全な現場になることがとてもいいと思います。
古川所長・堀切氏へインタビュー

元請のお立場ではどういったシーンでビルダーズポイントを利用されていますか?
堀切氏:技能者の方が現場に入場する際に、Buildeeの顔認証をしているのですが、その時にポイントを自動付与しています。他には、安全大会に参加したとき、安全表彰時や、ヒヤリハット報告をしてもらったとき、日建連(日本建設業連合会)などの各種アンケート回答に協力してくれた方にポイントを付与しています。ヒヤリハット報告に関しては、所長が報告内容を確認したうえで、ポイントを設定しています。
古川所長:躓き・転倒などのヒヤリハット報告が主ですが、「こんなところに気づいてくれたんだ」と思うような報告には少し多めに付与しています。
堀切氏:先日、鉄骨建方の実施が難しい状況になった際に、協力してくれた技能者の方にポイントを付与しました。初めて、そういった業務的な面で付与をしましたね。
古川所長:前日、明日からの鉄骨が建てられないのではないかといった状態で、当社の社員が頑張っていたのですが、力も技術もいる作業で社員ではどうにもならない状況でした。そこで、急遽技能者の方に清掃や片づけを手伝ってもらったので、ポイント付与でも安いくらいです。
Buildeeの顔認証でポイントを自動付与されているとのことですが、Buildeeと連携できる点はどう思いますか?
堀切氏:Buildeeと連携できる点はとても便利だと感じています。ただ、一部エラー等で、手入力で運用している部分もあります。
現場で、どのくらいビルダーズポイントを利用するなどの計画はありますか?
古川所長:何ポイントっていうと難しいですね。現場の人数によって流動的になると思いますが、月に一人5,000ポイントずつぐらい貯まるのがいいのかなと思います。安全大会やヒヤリハット報告などに付与しています。
最初はどのようにビルダーズポイントを周知してくださったのですか?
堀切氏:新しく現場に入る技能者の方には「新規入場者教育」を受けてもらいますが、その中にビルダーズポイントについての説明を組み込み、説明終了後にそのままアプリのインストールを勧めるようにしています。納税に関してもそこで説明をしていますが、やはり個人事業主の方は確定申告の資料をまとめるのが大変だと懸念の声が上がります。それでも半数以上の方はインストールを進めてくれています。運用前にすでに入場していた方については、やはり周知が行き届かない部分がありますが、あとから職長さんから聞いたと、私のところへ聞きに来てくれる方もいらっしゃいました。あとは、周知用のポスターを様々な場所に貼りました。
技能者の方の反応で印象的だったことはありますか?
堀切氏:たとえば左官屋さんだと年配でスマホがいじれない方や、アプリをインストールするのが面倒に感じる方が多いのですが、それでも諦めずに一緒にパスワードを考えてインストールしてくれました。また、PayPayをインストールしていない方が多く、使い方がわからない方もいましたが、「一緒にコンビニに行きましょう」とお誘いし、会計時に使い方を教えたりすると、どんどん使ってくれて「これ楽だね」や「これを機にキャッシュレスにしてもいいね」と言ってもらえるのが嬉しかったです。元請を介さずに、技能者さん同士で「絶対入れた方がいいよ」と利用が広がっているので、いいアプリだなと思います。
古川所長:何か技能者さんにお願いした時に「ビルダーズポイント貰えるの?」という会話が普通に出てくるようになりましたね。このような反応をもらったことで浸透したなと感じました。アプリを入れるのが面倒だったり税金がかかったりしますが、どんどんポイントが貯まっていくので、嬉しいといった声を聞きます。業務を手伝ってくれた技能者さんにポイント付与した次の日に、「昨日はありがとうございました」と声をかけてもらったこともありました。こちらとしては「ありがとう」という気持ちをポイントで表せて嬉しいです。昔は、冷蔵庫に冷やしていたビールを渡すなんてこともありましたが、その代わりにポイントで渡せるのはいいことだと思います。技能者へのインタビューパートでご家族のためにお菓子やジュースを買うという話がありましたけど、そういう使い方をしているのだと分かって嬉しかったですね。
ビルダーズポイントへの期待と展望
ビルダーズポイントの運用が浸透し、現場への入退場時やヒヤリハット報告、技能者のヘルプ対応など、様々なシーンでポイントを付与している中央三丁目現場ですが、ビルダーズポイントによるモチベーション向上策について堀切氏は次のように言及しました。
「技能者の“仕事の質を認めてほしい”という思いは強いと思うので、入退場でポイントを自動付与するだけでなく、現場への貢献に対する謝意をポイントで付与するシーンを増やしていくことでモチベーション向上をもたらすのではないかと思います。なので、定期的に技能者の皆様にアンケートを取って技能者側の思いなどを汲んで、全員のモチベーションを高めることができればと考えます」
堀切氏は続けて、現状の課題についても次のように話します。
「技能者のなかには、まだガラケーを利用している方もいますし、外国人技能実習生は、Wi-Fi環境下でしかスマホを利用できないため、全員を対象にポイント付与を実施しても、ポイントを受け取ることができません。最初、ポイントを貰えると思いとても喜んでくれていたのに、外国人技能実習生にポイント付与できず、悲しませてしまったシーンが2度ほどありました。どのような環境下でも現場で働く全員がポイントを受け取れると、よりよくなるのではと思います」
「我々としては、もし外国人技能実習生の方もポイントを受け取れるようになったら、今までの実績を確認したうえで、遡ってポイントを付与していきたいと思っています。こちらの不手際でポイント付与できなかった場合は、遡って付与する対応も進めています」と堀切氏はポイント付与することができなかった技能者への対応策についての考えを述べました。
最後に、古川氏は協力会社を介さず、元請から直接ポイントを付与することのできるビルダーズポイントを利用することで表すことのできる感謝を次のように述べ、インタビューを締めくくりました。
「“技能者の皆さんは現場にとって宝です”と常々言っていますが、言葉では伝えきることのできない点をビルダーズポイントのポイント付与という形で補完しています。このような恩返しを行うことで、この現場を大事にしている気持ちが伝わってくれるといいなと思います。その先、実務に即した運用によって安全への意識や業務への意欲がより向上してくれれば、現場にとってもプラスになると思います。ビルダーズポイントは技能者の方の仕事に対して恩返しができるシステムだと思うので、ポイントを付与することで“ちゃんと見ているよ、働きぶりを認めているよ”という気持ちが伝われば嬉しいですし、ビルダーズポイントがどんどん全国に広がっていき、技能者に還元される機会が増えることを願っています」
※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年8月)のものです。