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技能者の意欲向上に向け、ビルダーズポイントを全支店に導入へ
~導入に至った背景~
株式会社安藤・間様
- 事業内容
- 建築・土木・不動産等
- 資本金
- 170億円(2025年3月末日現在)
- 導入の目的
- 技能者の意欲向上
- 導入後の効果
- 現場の一体感醸成、CCUSタッチ率改善、イベント参加意欲の向上
安藤ハザマでは技能者のモチベーション維持・向上、技能者に配布する景品購入や配布業務の省力化、現場のコミュニケーション活性化や安全衛生対策の推進などを目的として、2024年7月より東北・関東・関西エリアの10現場で「ビルダーズポイント」を試験導入しました。数百名の技能者を対象にサービスの有効性を検証したところ、一定の成果が確認されたため、2025年7月より全支店での導入に至りました。今後も所長たちの創意工夫を加えながら活用ノウハウを蓄積し、社内で共有していく方針です。
IT活用による業務効率化が進む一方で現場の一体感が薄れるといった新たな課題も
安藤建設株式会社と株式会社間組の合併で、2013年に発足した株式会社安藤・間(呼称:安藤ハザマ)。創業から150年を超える歴史と実績を誇るゼネコンです。2020年2月に策定した、グループの長期ビジョン「安藤ハザマVISION2030」では、「イノベーションの加速で新たな価値を創造」するという基本方針に基づき、「お客様価値の創造」、「株主価値の創造」、「環境価値の創造」、「従業員価値の創造」という4つのビジョンを掲げています。
この「安藤ハザマVISION2030」につながる「中期経営計画2025(2023年度~2025年度)」では、現場力の強化を図る重点施策の1つとして「生産プロセス改革による利益生産性向上」に取り組んでいます。その一例が、新規入場者教育のオンライン化です。対面で行ってきた教育のうち、教育動画の視聴と理解度テストの受検を事前にWeb上で実施する環境を構築し、スマートフォンなどからオンラインで事前に受講できるソリューションを開発。新規入場者および教育担当者の負担軽減を実現しています。
一方で、このようなIT活用がさまざまな分野で進む中、新たな課題が懸念されるようになっていきました。建築事業本部 建築事業企画部長の鈴木克史氏は、その課題を以下のように語っています。
「現場の業務の多くがIT化され、効率的に行えるようになってきました。便利になった反面、現場でのコミュニケーションが減ってきており、現場の一体感が薄れてしまわないか、という懸念も出てきていたのです。現場の一体感は工事を安全かつ円滑に遂行する上でも重要ですから、その一体感を醸成する上では対面でのコミュニケーションを促進する施策も必要だと考えていました」
現場の一体感や働きがいへの課題意識を背景に、安藤ハザマでは協力会社と連携し、「担い手確保に向けた施策の推進」に取り組んでいます。具体的には、技能者の就業実態を可視化するため、CCUS(建設キャリアアップシステム)のカードタッチ率を70%以上とする数値目標を設定。これにより、キャリアパスの明確化や処遇改善につなげ、技能者が安心して働ける環境づくりを進めています。こうした取り組みは、技能者の定着と育成を促し、持続可能な建設業界の実現にもつながっています。
現場での活動時に提供する景品等をポイント付与に切り替え
その課題意識をさらに深く捉え、安藤ハザマが採用したサービスがビルダーズポイントです。土木事業本部 土木工事管理部 システム運用グループ長の澤正樹氏は、全支店導入に至るまでの経緯を次のように説明しています。
「私たちがビルダーズポイントのことを初めて知ったのは、2023年2月ごろだったと記憶しています。その後、リバスタからの情報提供を受けて社内で本格的に検討を進めてきました。2024年6月にビルダーズポイントが提供開始となり、7月からは建築と土木を合わせた10カ所の現場で試験導入を開始しました。約1年の試行を経て、数百名の技能者を対象にサービスの有効性が実証され、多くの知見も得られました。これを踏まえ、2025年6月には全支店の現場に対して説明を行い、7月1日から正式に全支店導入を始めることにしました。正式導入は新規着工現場だけでなく着工済現場でも始まっており、8月末時点で60カ所以上の現場が採用に至っています」
安藤ハザマでは、試行段階からビルダーズポイントの全支店導入を想定していました。ポイント付与の対象となる条件や、その際に付与するポイント数などの設定は導入した現場に委ねられており、ポイントの原資は現場の予算から拠出していると言います。
「例えば、現場で安全大会などのイベントを開催した際、参加してくれた技能者さんたちに景品等を提供したりすることが、これまで広く行われていました。それらをポイント付与に切り替えれば、景品購入に係る手配が不要となりポイントを付与された技能者はポイントを自由に使えるなど、お互いにとってメリットがあるだろう、という考え方です」(鈴木氏)
近年では、現場業務のIT化が進んだこともあって多くの技能者がスマートフォンを活用しており、またポイントサービスを日頃から利用している人も増えてきました。例えば現場事務所などに設置される自動販売機も、ポイントで商品を購入できるものが一般的になっています。つまりポイントは、いわば“現金”のように自由に扱えるため、技能者にとって喜ばしいことでしょう。さらに元請側にとっても、景品・粗品を準備して配布する業務負担を軽減でき、効率化につながります。
ビルダーズポイントが現場の一体感を醸成
CCUSカードのタッチ率向上やイベント参加意欲の向上につながる
安藤ハザマにおいてビルダーズポイントは正式導入されたばかりですが、これまでの試行現場でさまざまな活用が行われ、それらの施策の成果が確認されています。
例えば、CCUSカードのタッチ率向上策の一環として、入場時のカード認証や顔認証ごとにポイントを付与する施策を実施したところ、3カ月でタッチ率が18.5%も上昇した現場があるとのことです。
なお、各認証の実装にあたっては、SIM一体型カードリーダー「BANKEN Reader BLACK2」とAI顔認証機器「BANKEN FACE」を導入し、「Buildee 入退場管理」により現場ごとの技能者の入退場履歴を記録しています。これらの履歴はCCUSへ自動連携されるため、CCUSカードを持参していない場合でも、「BANKEN FACE」による顔認証を通じてCCUS情報との照合が可能です。これにより、カードタッチと同等の記録が残り、タッチ率の向上にもつながります。
また、現場で開催する安全大会や改善提案活動、一斉清掃や安全パトロールといったイベントにおいて、参加者へのポイント付与や優れた提案への報奨としてポイント提供などを行ったところ、技能者たちの参加意欲が高まり、参加率が向上しました。
「こうしたイベント参加率の定量的な比較はこれからですが、現場の社員や技能者さんたちのコメントからは明らかにモチベーションの向上が確認できました。またビルダーズポイント導入によって、これまで正確に把握できていなかったイベント参加者を把握できるようになりました。他にもイレギュラーな業務の対応をお願いするときに、感謝の言葉と一緒にポイントを贈呈することで、急な作業でも頼みやすくなり、また引き受ける側も快く協力してくれる、といった声もありました」(澤氏)
こうして、現場のさまざまな場面でポイントを付与することにより、現場のコミュニケーションが促進され、現場の一体感が高まっていくと評価されているのです。
「現場が一丸となることは、プロジェクトの遂行において非常に重要なことです。IT化が進み、現場の働き方が変わってきましたが、建築や土木の工事にはやはり人間の手による作業が欠かせません。ビルダーズポイントをきっかけにして、現場で働く人たちの一体感を強めることができており、今後も大きな効果が期待できると考えています」(鈴木氏)
ポイント付与の運用ノウハウを
全支店で共有しさらなる活用促進へ
前述の通り、安藤ハザマではビルダーズポイントの活用を各現場の裁量に委ねています。所長をはじめとする現場職員たちが、自由な発想でビルダーズポイントを運用しているのです。そして、そのポイント付与の運用次第で、得られる効果が大きく変わることもあると分かってきました。
土木事業本部 土木工事管理部 システム運用グループの碇菜瑠実氏は、その一例をこのように紹介しています。
「例えば入退場の顔認証には、1回100円相当のポイントを付与する現場が多いのですが、所長のこだわりで『缶コーヒー1本分』ほどのポイントに設定し、技能者の皆さんに好評を得ているケースもあります。その一方で、ビルダーズポイントを導入してもタッチ率があまり向上しなかった現場がありました。原因を調べたところ、技能者の皆さんに対する説明不足とみられています。工事の工程が進み、協力会社が入れ替わっていく中で、現場に新たに入る技能者へのポイント付与施策の周知が不足し、利用促進につながらなかったようなのです」
こういった具体的なノウハウは、例えば各支店レベルで定期的に開催される所長会など、現場同士の横のつながりでも共有されつつあるそうです。また本社側でも、現場にまつわる多様な情報を収集しており、今後の現場へのサポートを通じて、ノウハウをさらに蓄積しそれらを同社内で広めていく方針です。 澤氏は、ポイント付与施策のさらなる普及に向けて、リバスタへの期待を次のように語ります。
「私たち本社側の立場としては、所長たちだけでなく、現場の若手職員や協力会社の技能者さんたちにも、さまざまな形でビルダーズポイントを知ってもらう機会を増やしていき、現場に負担を掛けることなく普及させていくことが求められています。全支店展開することはプレスリリースでも発表しましたし、ポイント施策の展開に有効と思われるショート動画を作成して新規入場者向けの教育動画に追加する方針です。また今後は導入現場数が一気に増えるため、現場職員に向けたオンラインでの説明を積極的に進めていきます。直近では全現場に向けて具体的な活用例を紹介するWeb説明会を、7月から9月にかけて毎月実施する予定です。そこにリバスタも協力していただけることになっており、今後もビルダーズポイントの普及を一緒に促進していけたら幸いです」(澤氏)

